2008年09月06日
鉄眼版一切経版木
「現代のようなコピーや印刷技術がなかった時代、書籍は全て手書きで
模写されており、複写から複写を重ねるうちに間違いが増え、本来の意味が
わからなくなる物もありました。
大切な仏教の経典も例外ではなく、それを憂いた萬福寺の僧 鉄眼禅師
(てつげんぜんじ:江戸初期 隠元禅師の弟子)は25年の歳月をかけて
経典の文字を板木に彫刻し、6万枚に及ぶ“鉄眼版一切経版木”を完成させました。
~ らくたび京都講座 2007年度第16回 参考資料より ~」
昨年の講座で若村先生よりこのお話を聞いた時、「行きたい!見たい!」と
思ったのですが、、、、実はその後すっかり忘れていました。(ごめんなさい)
しかし、今年の夏に長野県へ旅行した時に、善光寺でご住職さんが、
「ここには京都の萬福寺で印刷された一切経が収められています」と何気なく紹介され
「あぁぁぁl、若村先生が言ってたあれだ~!!」と思い出しました。
以来、もう気になって、気になって仕方がなかったのですが、
昨日ようやく行くことができました。
黄檗山 宝蔵院 (萬福寺から徒歩1分)
拝観料(300円)を払った後、案内された建物がやたら大きく、イメージと
違っていたので、ちょっと躊躇したのですが、中に入って納得。
2階、3階には版木がびっしり積み重ねられています。
薄暗い部屋で、人影もなく、「ど、どうしたらいいの~」と動揺していたのですが、
講座の時に、若村先生が「部屋の一番奥で職人さんが黙々と印刷されていました」と
おっしゃっていたのを思い出し、奥のカーテンを開けてみると、、、
いらっしゃいました。
森:「こんにちは、ちょっと見せて頂いていいですか?」
職人さん:「はい、どうぞ」
シーン・・・・ (その後の会話なし)
森:「えっ、どうしよう、怒ってはるんかなぁ?」
内心ビクビクしながら、しばらくは黙って見ていたのですが、沈黙に
いたたまれなくなり、
森:「あのぉ~、長野の善光寺でこちらのお話を伺って来たのですが・・・(ドキドキ)」
と言ったとたん、
職人さん:「善光寺で聞いたんか~!そやでここで印刷したんやで!(笑)」と
満面の笑顔で返して下さり、そのギャップに少々ビックリ。
心を許して(?)もらえたのか、印刷の手を休め、版木を見せて説明を始めて
下さりました。
“木版”と言えば、小学生の頃の年賀状のイメージしかありませんでしたが、
字体の美しいことといったら、もう、感動もんです。現在パソコンで使っている
“明朝体”そのものです。それがビッシリ彫られていて、職人さんの手際よい
手さばきで印刷されます。
森:「わぁぁぁ~すごい!(驚)」
職人さん:「そうか、そうか?じゃあ、もっとすごいの見せてやろう(笑笑)」
とかなんとか言いながら、棚の中から次々と違った(なんせ6万枚あるんで)版を
出して見せてくださいました。
それにしても、どこに何があるのか、よく覚えてらっしゃること・・・
明朝体タイプだけでなく、尼さん用のかな書体タイプ、お経の最初のページと
最後のページに必ず載せる絵(なんという物なのかわかりませんが)などなど。
森:「何年くらいお仕事されているのですか?」
職人さん:「30年ちょっとかな。でもワシは印刷してるだけやし。
これを彫った人はすごいけど、ワシは墨塗ってるだけやし」
いえいえ、何をおっしゃる。確かに鉄眼禅師はスゴイですよ。
でも30年に渡って、版木と向き合い、真摯にお仕事をされてきた職人さんも
とってもステキです。
最初は5分で帰ってしまおうとしていましたが、気がついたら2時間も見学を
させて頂いていました。
皆さんも、機会があればぜひ行って見て下さい。
そして、ちょっと勇気が要りますが、職人さんとお話をしてきて下さい。
私も見ていない秘蔵の版(なんせ6万枚なんで)が見られるかも?!
(ほとんど一人でお仕事をされているので、いらっしゃるかどうかを確認
されることをオススメします。電話:0774-31-8026 )
長々と書いてしまって、すみませんでした。
らくたびレポーター 森